美容院の帰り、4日前に止まった腕時計の電池を換えに、時計屋さんに寄った。
藤沢市街地に古くからある、広さ1坪半程のこの時計屋さんは、特別愛想がいいというわけでもないんだけど、なぜかわざわざでもここへ、換えに行くのだ。
「電池交換お願いしま~す。」と渡すと、約10分弱、時計屋さんのおじさんは奥へ入り込んで、静かに作業をする。
その間私は、店内に提げてある色々な時計を見上げたり、見比べたり。
老眼鏡も置いているからなのか、少し錆びて曇った大きめの鏡も置いてあり、美容院帰りで、カットした髪が顔に付いていないかその鏡を覗き込んだりして、おじさんを待った。結構長い。
「あ~~い。」いつもはこれで、お金を渡して終わりなんだけど、
「ずっとつかってなかったの?」とおじさんが無表情でつぶやいた。
ズットツカッテ?…一瞬意味が分からなくて、でもすぐ「いえ、そんなことない…」と。
そう、4日前の午後11時過ぎ、まで動いていた。
「6年も前だよ、平成19年。」
そうだった。おじさんはいつも電池に、交換日を書き込んでいるらしい。奥で作業してるから、見たことはないんだけど。6年持ったということ。
お互い、誇らしげに顔を見合わせた。
帰り際、また来ますと言ったら6年後?と、少し嘘っぽい気がして言えず、
(きっと来ることになるはずだけど)
「お世話様でした。」と、当たり障りのない挨拶をして、店を後にした。
時計は、洋服や雑貨みたいにちょこちょこ買うことはなく、約15年同じものを使っている。決して高価な物ではないが、大切な時計だ。
この機種くらいだと、電池の寿命は約3年らしい。
だから、あの無表情なおじさんでも驚いたんだなあ。
次にあの店へ行くのはいつだろう?
Good luck!
おじさんを戦友のような気持ちで、想う。